【ぷらっとコラム004】職場のコミュニケーションに交流分析を活かす

職場のコミュニケーションに交流分析を活かす

「心のやり取り」を知ることで、職場が変わる

なぜ話がかみ合わないのか?

「同じことを伝えているのに、なぜか誤解される」
「上司と話すと緊張して、思ったことを言えない」
「部下に注意すると、逆に反発されてしまう」

職場では、言葉のやり取りそのものよりも、心の状態がコミュニケーションの質を左右します。そこで役立つのが心理学の理論「交流分析(Transactional Analysis、以下TA)」です。

交流分析とは

TAは、アメリカの精神科医エリック・バーンが提唱した心理学理論です。人と人のやり取り(トランザクション)を分析し、より良い関係を築くための方法を示しています。

特に有名なのが、人の心を「自我状態」と呼ばれる3つのモードに分ける考え方です。

  • P(Parent:親の心) … 教えたり、指導したり、批判するモード
  • A(Adult:大人の心) … 客観的に考え、合理的に判断するモード
  • C(Child:子どもの心) … 感情的に振る舞ったり、自由に表現したりするモード

私たちは状況に応じて、この3つを使い分けています。しかし、やり取りがかみ合わないときは、自我状態のズレが生じていることが多いのです。

職場でよくあるすれ違いの例

例1:上司の「P」と部下の「C」
上司「どうしてこんなミスをしたんだ!(P:批判的な親)」
部下「だって仕方なかったんです!(C:反抗的な子ども)」

このやり取りは平行線になりがちです。上司が「なぜ起きたかを一緒に考えよう(A)」と切り替えれば、部下も冷静に「状況を説明します(A)」と応じやすくなります。

例2:同僚同士の「C」と「C」
Aさん「もうやってられないよね!(C:感情的な子ども)」
Bさん「ほんとほんと!やめたくなる!(C:子ども同士)」

愚痴を共有することで一時的に気が楽になりますが、解決にはつながりません。どちらかが「じゃあ具体的にどう改善できる?(A)」とシフトすれば、建設的な話に変わります。

TAを活かした職場の工夫

1.自分の自我状態に気づく
まずは「今、自分はPで話していないか?Cで反応していないか?」と意識してみましょう。自覚するだけで無用な衝突を減らせます。

2.A(大人の心)を意識する
職場で特に大切なのはAのモードです。事実やデータをもとに、冷静にやり取りすることで、コミュニケーションの質が安定します。

3.相手のモードに合わせる・切り替える
相手がCで感情的に話しているときは、まず受け止めてからAに誘導するなど、相手の状態を尊重しつつ調整することが有効です。

4.「禁止令」と「ドライバー」に気づく
TAには「子どもの頃に受けたメッセージ(禁止令)」や「こうすべきだという思い込み(ドライバー)」という概念もあります。

例:   ・「失敗してはいけない」(完璧主義的になりやすい)
     ・「人に頼ってはいけない」(過度に抱え込みやすい)
      これらに気づくだけでも、自分や相手への理解が深まります。

メリット:心理的安全性の向上

TAを活用すると、職場に次のような変化が期待できます。

  • 上司と部下の関係が対立から協力に変わる
  • 感情的な対立が減り、冷静な話し合いができる
  • 相談や意見が言いやすい雰囲気が広がる

これは近年注目される「心理的安全性」の向上にも直結します。安心して意見を出せる環境は、生産性や創造性を高める要因となります。

まとめ:交流分析で見える“心の地図”

職場のコミュニケーションは、単なる言葉のやり取りではなく、心のモード同士のやり取りです。交流分析は、その地図を提供してくれる理論といえるでしょう。

「今、自分はどの自我状態で話しているか?」
「相手はどのモードで応じているか?」

その気づきが、無用な衝突を減らし、協力し合える職場をつくる第一歩になります。心理学の知見を日常の会話に取り入れることで、仕事のストレスは確実に減り、職場の空気も少しずつ変わっていくのです。