【ぷらっとコラム009】キャリアと子育てを両方楽しむ人生のために

キャリアと子育てを両方楽しむ人生のために

心理学から学ぶ「バランス」の考え方と実践法

なぜ両立は難しいと感じるのか

「仕事も子育ても頑張りたい」――そう願う親は少なくありません。
しかし現実には、育児に追われて仕事が中途半端になったり、キャリアに力を注ぐと子どもとの時間が減って罪悪感を抱いたりと、板挟みの思いをする人が多いのも事実です。

心理学の研究では、人が強いストレスを感じるのは「時間が足りない」からではなく、「役割の葛藤」が大きいとされています。つまり「良い親でいたい」「仕事でも成果を出したい」と二つの役割の期待に応えようとすることで、自分を追い詰めてしまうのです。

では、どうすればキャリアと子育てを“両立”ではなく、“両方楽しむ”ことができるのでしょうか。

マインドセット1:完璧を目指さない

両立が苦しくなる大きな理由は、「100点満点を取ろう」としてしまうことです。心理学ではこれを完全主義(パーフェクショニズム)と呼びます。完全主義は一見努力家に見えますが、「足りない自分」ばかりに目が向き、自己肯定感を下げてしまうリスクがあります。

大切なのは「合格点を自分で決める」こと。

  • 子育て:今日は一緒に10分遊べたらOK
  • 仕事:今日は優先度の高いタスクを1つ片づければOK

「できなかったこと」ではなく「できたこと」に焦点を当てると、心が軽くなります。

マインドセット2:キャリアと子育ては相互作用する

キャリアと子育ては対立関係ではなく、実は相互に良い影響を与え合います。心理学のキャリア研究では、これをワーク・ファミリー・エンリッチメント(相互充実)と呼びます。

  • 仕事で培った問題解決力が、子育てでのトラブル対応に活きる
  • 子どもとの関わりで育まれた共感力が、職場での人間関係を円滑にする
  • 子育てを通じた価値観の変化が、キャリアの方向性を見直すきっかけになる

「どちらかが犠牲になる」のではなく、「どちらも人生を豊かにする要素」と捉えることで、心の持ち方が変わります。

マインドセット3:周囲に頼る勇気を持つ

日本では「親がすべてを担うべき」という考えが根強く残っています。しかし心理学的には、社会的サポートを活用する人の方が、幸福度もパフォーマンスも高いことがわかっています。

  • 家事代行や保育サービスを利用する
  • パートナーと役割を見直す
  • 職場で柔軟な働き方を相談する

「自分がやらなければ」という思い込みを手放すことが、キャリアと子育てを楽しむ第一歩です。

実践のポイント:日常でできる工夫

1.タイムマネジメントより「エネルギーマネジメント」

限られた時間の中で大切なのは「効率化」だけではなく、自分のエネルギーをどう回復させるか。

  • 子どもが寝た後に10分だけ趣味を楽しむ
  • 出勤中に好きな音楽を聴く
  • 小さな達成感を感じられる行動を一日の終わりに置く

エネルギーが回復すれば、仕事にも育児にもポジティブな姿勢で向き合えます。

2.子どもとの時間は「質」を重視する

「長く一緒にいること」よりも「短くても集中して関わること」が大切です。

  • 5分間だけスマホを置いて本気で遊ぶ
  • 今日あったことを一緒に振り返る「おやすみ前の会話」を習慣にする
  • 子どもの目を見て「大好きだよ」と伝える

このような“質の高い時間”は、子どもの安心感を育て、親の満足感にもつながります。

3.職場で「心理的安全性」を意識する

職場において子育て中の社員が安心して働ける雰囲気があるかどうかは、キャリア継続の大きなカギです。

  • 上司や同僚に「今日は保育園のお迎えがある」と伝えられる空気
  • 有休や時短制度を気兼ねなく使える文化

心理的安全性があると、社員はキャリアと家庭の両立に前向きに取り組めます。

4.パートナーシップを大切に

夫婦・パートナーとの関係性は、両立の土台です。

  • 感謝の言葉を伝える
  • 「今日は何が大変だった?」と労う習慣を持つ
  • 役割分担を固定化せず、定期的に見直す

子育ては「チーム戦」。パートナーとの関係性が良いほど、キャリアと子育ての両方にゆとりが生まれます。

自分自身を支えるために

セルフコンパッション(自己への思いやり)

「もっと頑張らなきゃ」と自分を責めるのではなく、「大変な中でよくやっている」と自分を労う視点を持ちましょう。心理学の研究でも、セルフコンパッションを高めることでストレスが軽減し、モチベーションも維持しやすいことがわかっています。

キャリアを「点」ではなく「線」で考える

子育て期はキャリアのスピードが一時的に落ちることがあります。しかしキャリアはマラソンのようなもの。数年のブランクは大きなマイナスではなく、むしろ子育て経験が後に強みとして活きることも多いのです。

「今はこのペースで大丈夫」と長期的な視点で捉えることが安心につながります。

まとめ:キャリアも子育ても「楽しむ」視点を

キャリアと子育てを両立することは確かに簡単ではありません。しかし、心理学的視点から見ると「完璧を目指さない」「相互に活かし合う」「頼れるものを活用する」という3つのマインドセットを持つことで、両方を“楽しむ”人生が開けてきます。

  • 子どもとの時間は「質」を意識する
  • 仕事は「長期的な視点」で捉える
  • 自分自身を責めず、「よくやっている」と認める
  • 周囲と支え合い、安心できる仕組みをつくる

キャリアも子育ても、どちらもあなたの人生を豊かにする大切な要素です。
両立の「苦しさ」から一歩進み、「楽しさ」を感じられる関わり方を、今日から少しずつ実践してみませんか。