【ぷらっとコラム001】ネガティブ・ケイパビリティとストレスマネジメント

ネガティブ・ケイパビリティとストレスマネジメント

答えの出ない状況に耐える力が心を守る

なぜストレスはなくならないのか

「早く答えを出さなければ」「どうにか解決策を見つけなくては」――仕事をしていると、こうした焦りに駆られる瞬間は多くあります。会議で結論が出ないと不安になったり、将来のキャリアの明確な見通しが立たないと落ち着かなくなったり。私たちは「不確実さ」に直面したとき、強いストレスを感じやすいのです。

しかし現代社会では、複雑で正解が一つではない問題が増えています。そんな時に役立つのが「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方です。

ネガティブ・ケイパビリティとは

この概念は19世紀の詩人ジョン・キーツが提唱した言葉で、直訳すると「否定的な能力」。すぐに答えが出ない曖昧な状況や、不安定で不確実な状態に耐えられる力を意味します。

心理学の世界でも、ネガティブ・ケイパビリティは注目されています。人は不確実さを嫌う傾向があり、「早く白黒つけたい」という欲求が強いと、不必要に焦って判断ミスをしたり、強いストレスを抱えてしまったりします。逆に「まだ答えは出なくていい」と留まれる人は、結果的に柔軟で持続可能な判断ができるのです。

ストレスとの関係

ストレスの大部分は「不安」から生まれます。例えば、プロジェクトが成功するかどうかわからないとき、結果をすぐに知りたいと強く願うと、待つ時間そのものがストレスになります。

ネガティブ・ケイパビリティを身につけると、この「不安な状態そのもの」を受け止められるようになります。「まだ見えていないものがある」「今は決められない状況だ」と認めることで、不必要なストレスを減らせるのです。

仕事での実例

ある企業のマネジャーは、部下から次々と投げかけられる「どうすればいいですか?」という質問に即答しようとし、疲弊していました。しかし「すぐに答えなくてもいい」というスタンスを取り入れると、次のような変化が生まれました。

  • 「少し様子を見てから考えよう」と返せるようになり、自分の負担が減った
  • 部下自身が考える余地が生まれ、成長につながった
  • 組織全体が落ち着いた雰囲気になった

これはまさに、ネガティブ・ケイパビリティがストレスマネジメントに直結する例です。

日常生活でできるトレーニング

では、どうすればこの力を育めるのでしょうか。いくつかの実践的な方法を紹介します。

  1. 「わからない」と言う練習をする
    すぐに答えを出さず、「今はわからないけれど、考え続けてみます」と伝えてみましょう。
  2. 曖昧さを許容する習慣をつくる
    天気のように自分ではコントロールできないものを意識し、「揺れ幅があってもいい」と受け入れる練習をします。
  3. マインドフルネスを取り入れる
    呼吸や今ここにある感覚に注意を向けることで、「まだ見えない未来」にとらわれすぎずにすみます。
  4. 時間をかけることを肯定する
    結論を出す前に一晩寝かせる、数日考える、といった「待つ力」を意識的に実践します。

まとめ:不確実さと共に生きる

ストレスフルな時代を生きる私たちにとって、「すぐに答えを出さなくてもよい」と思えることは大きな救いになります。ネガティブ・ケイパビリティは、不安をゼロにする魔法ではありませんが、不安を抱えながらも落ち着いていられる力を養ってくれます。

答えの出ない問いに耐える力――それは現代を生き抜くための新しいストレスマネジメントの形なのです。